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  • 組子編 ~建具の文様~

    2016/05/13

    和室3枚引の障子+欄間。

    テーマは、シンプルながら風格の漂う「潔さ」を感じられる障子。

     

     

     

     

     

     

     

     

    素材やデザイン共に、MIXスタイルがお好みのお施主様ですが、この建具に関し

    ては、あまり多くの細工を入れずにまとめたい、と考えていらっしゃいました。

    そこで書院障子の中でも格式が高く、高級品にしか見られない「桐麻(きりあさ

    )」に極細の縦格子で構成し、欄間も同じ文様で揃える案をご提案。

     

     

     

    ◇桐麻文様

     

     

     

    他の和室では、アンティークの建具を購入したりごくシンプルな建具を制作して

    納めていますが、この和室に関しては私のこのご提案後から組子でオリジナルを

    制作することに拘られました。

    このデザインで、と決まった時は本当に嬉しかったです。

     

     

     

     

    □組手腰 画像赤丸部分

     

     

     

    障子と欄間には組手腰(くでごし)と言う細工を施してあります。

    ちなみに、二条城に使われている障子は全て組手腰で製作されています。

     

     

     

    この組手腰細工、大きな面取りをするための組手の細工で、繊細で手間がかかる

    ので一般的な障子ではほとんど見られませんが、全国建具大会に出品される様な

    障子には施されている事もあるそうです。

    技術を持っている職人が減少しているのも理由のひとつなのでしょう。

     

     

    しかし、お父様の代から建具製作をされていて熟練の職人さんが在籍する吉原木

    工所さんでは可能です。お宅の格にあった建具としたいから、と吉原さんからご

    提案を頂き手間を掛けて、丁寧に作って頂きました。

    文様の桐麻も複雑な仕口になっているため、お師匠様から教わるのも4年目以降と

    なる難しい物なのだそうです。

    こちらも当然、通常の障子を制作するより時間が掛かります。そこでお客様には

    、この細工でお作りするのであれば建築のお引渡しには間に合わない事をご説明

    し、制作時間を頂きました。

     

     

     

    最高級の銘木を使い、デザインをおこして、手間の掛かる細工を施して作る。

     

     

     

    昨今の住宅では、効率良く余計な手間を掛けずに建てるのが良しとされています。

    もちろんそれも大事な事です。

    ですが、建具や家具などインテリア(内装材含む)に関しては何でも手間を省くの

    が必ずしも良いとは限らないのです。

    建築、その工期や予算と擦り合わせの上、かけるべき手間はきちんと掛けて揃えて

    いく事で豊かな空間が生まれると思います。

     

     

     

     

  • 組子編 ~銘木と出会う~

    2016/04/01

     

     

     

    樹齢を重ねて年輪がみっしりと詰まっている。

    艶やかな美しい木目。

    耐久性に富む。

    などなど。

    この様に優れた特性を併せ持つ木材を、銘木と呼びます。

     

     

    樹種に限らず条件を満たし、本来の天然の美しさがあれば

    銘木とされる様です。古来より日本では「木」そのものの

    美しさを建築の装飾としてきました。

     

     

    家具デザイナーだった祖父や、木を扱う職人の方から幾度

    となく聞かされたのが、

    「銘木は持ち主を選ぶ」

    という話。

    今回は、そんな木にまつわるお話です。

     

     

    お施主様からのご依頼その②の、

    ・和室の3枚引の障子+欄間のデザイン

     

     

    当初設計担当者が様々ご提案をしていたそうですが、

    「ありきたり」ではないデザインを求められて私も案を

    出す事に。

    ご要望を伺う限り、この建具に関してはオリジナルのデ

    ザインを起こすのが良いと考え、既に提案していた組子

    への反応が良かったので、引き続き組子でご提案を練り

    ました。

    デザインの検討と同時に、使用する材についてもどうし

    ようか、と想いを巡らせている時でした。

     

     

     

     

    ある休日、何気なくSNSのタイムラインを眺めていると、

    吉原さんが最高級の地松を手に入れた!とUPしているの

    を見つけたのです。

     

     

     

     

     

     

     

    直ぐに連絡をして聞いてみると、懇意にしている材料屋

    さんから譲り受けた、30年以上は寝かされていたという

    地松が吉原さんの倉庫で眠っている、との事。

    「木目が凄いんですよ!」と高揚した声を聞いた瞬間、

    ごく自然に「その松を使わせて頂けませんか。」と言って

    いました。

     

     

    松くい虫の影響で、長年乾燥させた良質な地松は昨今大変に

    希少な物となっています。近年はどこの家具製作会社さんと

    お話していても、自然乾燥をきちんと施した、尺の大きな材

    を確保するのが難しい、金額が上がっているという話を耳に

    します。

    残念な事ですが、国産の良質な木材を求めるのが難しくなり

    つつある現状では、この様な材をタイミング良く見つけるの

    が大変です。お金を払えば手に入る物でもないという状況で、

    「凄い物が出てきた」

    などと聞いてしまうと、半ば反射的に確保しておかねば!と

    いう気持ちになったのがひとつ。

    そして建具や照明以外の置き家具のご相談も、同時進行でお

    伺いする中で、この地松はきっとお施主様のお好みに合うだ

    ろう、と確信に近い手ごたえの様なものも感じていました。

     

     

     

    お施主様に送って頂いた地松の端材を見て頂くと、即決!!

    でした。

    木に対する並々ならぬ関心がおありのお施主様は、当初予定

    していた材よりも金額が上がる事も承知の上で、地松を使っ

    た障子、欄間のご提案を決めて下さいました。

     

     

     

    その流れは驚くほどスムーズで、自然。

    上手くいく時ってこんな感じ。

     

     

     

    吉原さんも当初は柱にでもしようか、と考えていたそうで地松

    で組子を制作するつもりは全くなかったそうです。

    松は加工が大変ですが、高い技術に最高級の素材が出会った事

    で、希少性・芸術性の高い唯一無二の建具となりました。

     

     

    私が幼少のころから聞かされてきた、

    「持ち主を選ぶ」

    という冒頭の話は、聞いた時にはそんなものかな、位に思って

    いました。

     

    しかしこの建具のご提案で

    「地松が然るべきカタチになる」

    と、

    「銘木を所有するに相応しい方に繋ぐ」

    お手伝いが少しだけ出来たのかなぁ、とご縁の不思議さを

    実感せずにはいられない、思い出深い事例となりました。

     

  • 組子編 ~照明器具~

    2016/03/28

     

    「漆×現代建築」玄関ホールです。

     

     

     

     

    ホールから玄関を見る。

     

     

     

     

     

    壁は鹿児島県の姶良カルデラの大噴火によって発生した火砕流の堆積物、

    シラスで塗り、框に床、式台には欅の無垢材を使用、拭き漆で仕上げて

    あります。

    この様に天然素材をふんだんに使った内装は、最近の住宅では見る事が

    少なくなりましたね。

    ご趣味で集められている美術品の背景としても、「本物」の素材が持つ

    存在感で、装飾の魅力を更に増して見せてくれています。

     

     

     

    お施主様の拘りは、「木」です。

    木の持つ圧倒的な存在感を存分に感じたいと仰り、更にはありきたりの見

    せ方ではない物をお望みでした。

    頂いたご依頼その①の「玄関に置き型の照明器具」

    ご提案させて頂いたのが、こちら。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    吉原木工所さんオリジナルデザインの照明「しずく」。

    国産の檜を使用し、曲げ組子を用いたシンプルなデザインから零れ落ちる光

    がとても魅力的です。

    通常製作されている寸法はW275/H650/D135。

    この玄関ホールに置くにはやや小さいので、曲げ組子で作成可能なサイズを

    相談しながらサイズを調整。高さは1000㎜まで伸ばし、幅も調整。

    この空間における主役は内装材と美術品の共演、なので照明は曲げ組子と光

    のみとしたく、当時の「しずく」にあった脚も無しの特注でオーダーさせて

    頂きました。

     

     

     

     

     

     

    廊下ブラケットは

    吉原木工所さんの「風」を。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    これも実は特注品なんです。

    ふすまの向こうに続く客間は欅、地松、杉と多くの木材を使用し意匠的にもと

    ても見応えのある空間です。続く廊下は玄関ホールから欅の漆仕上げ。

    廊下の欅と同材の様に見せて、素材が主張しないようにと引き算のインテリア

    を考えていました。

    通常は檜で製作しているこの照明をタモ材で作成して頂き、床の端材を送って

    仕上げの色を合わせて頂きました。

     

     

    タモ材で曲げ組子は初めて、との事だったので製作可能かの検討の時間も入れ

    て、打ち合わせも慎重に。

    お陰様で実際に見てみると、客間の豪華さを引きたてつつ、灯りの存在感も上

    手く共存できたのではと思います。

     

     

     

    組子職人であり、デザイナーでもある吉原さん。

    この照明は吉原さんがデザインしたものです。作品のデザインを空間に合わせ

    て変えて欲しいと相談をする事、本当は少し悩みました。

    ですが、相談に対して出来る限りオーダーに対応しています、と応えて下さり

    上記の形で実現しました。

    より良くしたい、との相談に一緒に取り組んでくれた吉原さんの柔軟な姿勢の

    お陰で、

    「ある物を納める提案」

    ではなく

    「より空間に合わせた提案」

    が実現できたと思っています。

     

    本当にありがとうございました。

  • 組子細工が織りなす世界

    2015/12/26

    前回UPした外観写真で、全体の雰囲気は伝わったでしょうか。
    今回は邸内にちりばめられた組子細工の数々を、ご紹介します。

     


    玄関ホールの置き照明。
    特注サイズで、脚のデザインも変えて作って頂きました。

     

     

     

     

    広がる光と影が、大変美しいですね。

    廊下には、

     

     

     


    ブラケット照明、「風」を。

     

     

     

     

    櫛引の壁によく合います。

     

     

     

    一番の大物は、組子障子と欄間。
    普通の障子ではない物を、とご依頼を受け職人さんと相談し提案しました。

     

     

     

  • 漆仕上げの空間

    2014/05/19

    この住宅では和の要素を活かし、日本古来の建築様式の

    現代的解釈を試みています。

     

    大きな特徴としては木に拘り多様な樹種を使用している事と、ブログタイトル

    にもあるように室内の塗装に一部漆を使用している事です。

    漆の語源は「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれ、耐久性に

    富み独特の艶が魅力です。

     

    遥か昔から私達の祖先は、漆の固化膜の特性である独特の美しさや、酸や熱・

    アルカリにも壊されることが無い強靭さを利用して造形素材や塗料、接着剤等に

    使用してきました。現在発見されている漆を使用した最古の製品は、約9000年前

    の装飾的な衣服の一部に漆塗りが施されています。

    欧米では漆器をJapanと呼ぶことからも判るように、

    日本の特産品と考えられています。

     

    現代では科学合成塗料が主流となり、新しく建設している一般住宅での使用

    は珍しくなりましたが、少し前の日本では玄関や客間等の床や壁、棚や柱、建具

    の縁などに漆仕上げが使われている住宅は今よりも多かったように思います。

    漆仕上げの特徴は、木目がはっきり浮き出た深みのある表情です。

     

    特に広葉樹は、漆を塗って仕上げた良さが分かりやすい材です。

    拭き漆を施すことでその空間の格が数倍あがるほど豊穣感が漂うので、

    ご興味がある方は一度実物を見て頂けたらと思います。

     

    一度固化すると燃えないので(灰皿の塗装にも使用される程)趣味の美術品の

    収納部屋では、床・壁を漆で仕上げています。

     

     

     

     

    引き続き、漆仕上げの空間をご紹介していきます。
     

 
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